入試問題集2025|多摩美術大学
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※タイトルは受験時の原文そのままを表記しています86[教員コメント]初めての誕生日を祝う場面で、ろうそくに火を灯す瞬間を描いた作品。画面全体を明るく構成し、光だけを強調せず空間全体で祝福の雰囲気をつくり出している。光が当たる指先のみを丁寧に描き込み、それ以外の手の甲や手首など本来は暗闇に沈むように明度差で処理される部分を、描き込みの差によって焦点の浅さとして表現し、暗さの代わりに空間をつくる手法として定着させている点が非常に巧みな表現。[教員コメント]マラソンのゴールテープを切る瞬間を描いた作品。前方に大きく突き出された手は、指が強く広がり、皺の描写から指先にまで力が込められている様子が伝わってくる。0.1秒でも早くゴールに届きたいという気迫が、指の形に込められている。その一瞬の描写には、テープに手が届いて触れたという行為と、時間的な記録としての「はじめての領域」に届いたという意味が、画面の構成に自然に重ねられている。[教員コメント]人類史上で初めて火を起こす場面を想像して描いた作品。毛深い人物や原始的な方法による火おこしの描写から、遠い過去の出来事としての広がりが感じられる。「はじめて」を身近な体験にとどめず、歴史的視野で捉えている点に独自性があり、印象に残る発想。[教員コメント]仔象と人とが触れ合う場面を描いた作品。タイトルの「君」が示すように、これは単なる「初回の接触」ではなく、関係が築かれた末に心が初めて通じ合った瞬間としての「はじめて」が、丁寧に描かれているように感じられる。螺旋状に伸びる象の鼻が視線を導き、自然と目がその接触面をなぞるように流れていく構成になっており、「触れる」という行為に鑑賞者の意識が向かうよう仕組まれている。はじめて火をおこす初めて君と触れ合った祝!!!初誕生日!!全人未踏の新記録!!

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