入試問題集2025|多摩美術大学
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統合デザイン学科一般選抜総合型選抜学校推薦型選抜鉛筆デッサン87[教員コメント]芋を土から引き抜いた瞬間を描いた作品。左手で芋を握り、右手は画面手前に大きく描かれ、地面すれすれのローアングルから見上げる構図が、抜ける瞬間の迫力を強調している。日常では見えない収穫の瞬間を、自分の手で初めて体験した実感や喜びが、画面に強く定着するよう構成されており、その経験が視覚的にしっかりと表現されている。[教員コメント]飼ってる仔犬が初めて「お手」をしてくれた瞬間を描いた作品。「はじめてお手をしてもらった人の手」と「はじめて成功させた仔犬の手(前足)」、2つの“はじめての手”が描かれている。人の指が少し崩れており、成功の驚きを感じさせるとともに画面の単調さを避けている。白く柔らかな毛に包まれた仔犬の手の描写には、質感への繊細な意識が感じられる。[教員コメント]辞書で言葉を引く瞬間を描いた作品。人差し指で文字をなぞるように追う描写が、新しい言葉に出会うときの集中や慎重さを感じさせる。身近な道具である辞書の中に、自分がまだ知らない「はじめて」が潜在的に含まれているという発想が、見えない世界への入り口としての言葉の力と、その重みをあらためて示している。[教員コメント]ボールペンのインクが出ない原因が、先端に残された小さな保護キャップだったと気づく瞬間を描いた作品。このペンで初めて何かを書こうとした行為が、未使用を保証しペン先を保護する仕組みによって思いがけず妨げられている。新品であることを示すごく小さな部品を通して、「はじめて」の状態が自然に視覚化されている。無機的な造形をもつペンと、それを握る有機的な手との対比も印象に残る。書けないなと思ったら未知の言葉と初対面ぐわあ!やっと抜けたやっと覚えてくれた!

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