90[教員コメント]時間は人間の意思とは関係なく刻々と変化し続けているわけだが、私たちは暦の上で「新年」などと言う言葉を用いることがあるように、ある瞬間における変化に対して、特別な意味や価値を持たせてしまうことがある。この作品では1年を構成する31,536,000秒のなかでも、特に注目される1秒間を選び取り、時計の描写と言葉の組み合わせによって明確に示されている視点を評価した。[教員コメント]私たちはある状況を提示されたときに、頭の中でその後どうなるのかを想像してしまうことがある。この作品は、今まさにソフトクリームが落下し床に接する瞬間が描かれており、この直後には確実に台無しになることがありありと想像できる。タイトルからするとこの後起きる潰れた状態を描いても成立する可能性もあるが、衝突直前を示すことによって、私たちの頭の中により「その後起きてしまうこと」を強くイメージさせ、巻き戻したい気持ちを喚起させることに成功している点を評価した。[教員コメント]プロフェッショナルの持つ技術は、我々常人を遙かに超える速さと精度を有している。その技術の質を評価するためには、何らかの指標を定義する必要があるが、この作品では人参を切るという状況で「1秒間」の間にどのくらいの枚数を切ることができるのかを示すことで、母との技術力の差異を示す指標として用いている点を評価した。[教員コメント]この作品では「ガスコンロが着火する際に、火がすべて同時についているわけではなく、順番についている」ということが取り上げられている。そのこと自体は誰もがどこかで見たことがあり、言われてみれば当たり前のことなのだが、実際にそこまで注意深く意識してこなかった事象でもある。このような日常の些細なことを丁寧に取り出していくことはデザインをする上で重要な視点であり「1秒間」の内に起きている変化を見出し、提示している点を評価した。母なら5枚多く切れる実は順番に点いているハッピーニュー…1秒間巻き戻したい
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