芸術学科一般選抜総合型選抜学校推薦型選抜小論文 私にとって想像力とは、自分の記憶を元にイメージを膨らませる力である。ジュリアン・オピーの連作シリーズ《八つの風景》の内に一つに《雨、足跡、サイレン》という作品がある。夜の道路に雨が降る場面が抽象化されコンピューターで出力されたものだ。私はこの作品を見ると、夜の高速道路を走る車の中にいる時の非日常感を思い出す。他にも光を反射する濡れた道路の生々しさや、雨の降る夜に感じる異様に冷たい空気を作品から感じる。抽象化された景色から具体的なイメージを作り上げる時、そこには鑑賞している私の記憶と作品が想像力によって結び付けられている。想像力は作品を鑑賞する際、私達が持つ記憶をイメージに昇華させる。私にとって想像力とは、認識し再構築する力だ。現代アーティストのタカサキショウヘイは、アメリカのソルトレイクでロバート・スミッソンのランドアート《スパイラル・ジェッティ》を見たという。湖の上に巨大な渦が描かれているアートだが、タカサキ氏は近くで鑑賞したが故に、それがただの石と土の集合だと感じた。しかし、近くなればなるほど遠く感じるという点が、知れば知るほど他人だと思い知らされる人間関係に似ていると認識し、孤独をテーマに再構築し、部屋いっぱいの巨大な作品を完成させた。このように、どのような形であれ対象を自分なりに認識し、かみくだき、自分なりの形へと再構築するその力こそが想像力であり、それこそが次になる創造への第一歩となるのではないだろうかと私は思う。81問題1 | あなたにとって想像力とは何か、350字以内で述べなさい。小論文[教員コメント]短い字数のなかで、想像力を「自分の記憶を元にイメージを膨らませる力」と定義した後、具体的な情景を抽象化し、コンピューターで出力した作品を媒介として、鑑賞する者の記憶と、鑑賞される作品に描き出された情景の相互作用によって、あるイメージが成立するとまとめたことは大変見事である。[教員コメント]まず、想像力を「認識し再構築する力だ」と自分独自の定義を下してから文章をはじめているところが素晴らしい。しかも、その実例として、ロバート・スミッソンのランドアートと特異な出会い方をした日本の若手アーティスト、タカサキショウヘイの営為を取り上げているところが意欲的である。
元のページ ../index.html#83