tonATELIER_Vol.02
10/19

カード”を2005年「TEXPRINT2005」のコンペで発表し、英国のテキスタイルデザインの登竜門と言われるブレイキング・ニューグラウンド部門で1位を獲得、日本人初の快挙を成し遂げた。「もともと日本人が得意とする複雑な多重織という技法を応用すれば、裏表の違う生地ができると発想していました。日本には埋もれている伝統技術やハイテクノロジーから発想する斬新なアイデアの芽がたくさんあります」 帰国後の彼女の活躍は目覚ましい。日本各地を飛びまわり、染織の高い技術を持つ産地とファッションマーケットとが適合できるようにディレクションした生地のコレクションを毎シーズン作り、主にヨーロッパの有名メゾンに提案している。その生地の輸出を担当している(株)ダイドーインターナショナルと梶原は、産地で出会う素晴らしい素材を日本の市場でも紹介していきたいという思いを一致させて、共同でテキスタイル発信のブランド「グリデカナ」を立ち上げた。 ロゴ、マーク、店舗デザインなど全体原風景ともいえる森の風景をシンボリック・イメージとしたグリデカナのポスターは、同じ専攻の先輩にあたる植原亮輔氏のディレクション。高校生の頃すごく影響を受けた詩、『道程』です。進路に悩んでいました。美大に行きたいけど両親は望んでいない。そんなときに「僕の前に道はない」、衝撃でしたね。そうか道なんてないんだ、なくってもいいんだって。だから行きたいところに行きたいように行こうと。だって道は、わたしの後にできる。 RCAの授業は実践的だ。始業式の翌日には企業の人がやってきて、こんな商品は作れないかと課題が出された。国籍の違う6人の学生が本気のプレゼンをする本気のコンペが毎回行われた。 「RCAではコンペに勝つと賞金を頂き、インターンの機会を企業から与えられます。わたしはさまざまな国の織物工場で働き、経験を積みました。そのなかで、フリーランスとしてのプロ意識が芽生えたと思います。自分の可能性をとことん考えさせられました。それが自らのオリジン探しになり、日本の文化や北海道の自然が大好きだということを意識しました。RCA時代に発見した日本流の感性とテクニックの合わせ方は、わたしの武器になりました」 そして梶原加奈子は、表と裏の柄が違う2枚の布が繋ぎ目もなく1枚になっている不思議な布地“カメレオン・ジャ高度な技術を必要とされるジャカード織機。日本人の繊細さと緻密さとが、その可能性をさらに高める。生地に特殊プリントをしている作業場の風景。豚の皮革に友禅染を施した、まさに“秘伝”の逸品。1枚の布が変幻万化する“カメレオン・ジャカード”『高村光太郎詩集』高村光太郎/新潮文庫影響を受けたモノ・コト「わたしの後に道はできる」何をしたいか、何になりたいかを目標にすること。少し先の目標を持てば、立て続けに頑張れる。

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る