tonATELIER_Vol.02
11/19

かで育った。彼女は、近くの森のなかを流れる川にこっそり塩をまいた。塩をまけば川は海になると思ったのだそうだ。川への塩まきは2年ほど続けられたが、もちろん川は海にはならなかった。 「思い立ったら行動する子供だったんです。それもしつこく。そういうところは変わらないのかも」と笑った。デザインするときには、彼女のなかに緑や空や水があって、光や色が刻々と変化していく、その瞬間がアトリエになるのだそうだ。 今、美術を目指している高校生へのエールをお願いしてみた。 「何になりたいか何をしたいかを目標にすれば、目先にある受験の苦しみは軽くなる。その先に目標を持つと、立て続けに頑張れます。好きなことを持続する方法を考えること。わたしは好きなことを続ける執着心でここまできたようなものですから」Graduates' messageのグラフィックイメージは、趣旨に共感してくれた多摩美の先輩であり同じ北海道出身の植原亮輔氏が担当し、世界観やコンセプト作りを共に考えた。2010年秋、グリデカナの直営店は、1号店が北青山にオープンした。店内にはカラフルなスカーフやバック、靴下などの小物やインテリア雑貨が溢れている。 「コンセプトはムービング・テキスタイル。気持ちが動く、人が動く、そして社会が動くようなテキスタイル発信の場を作りたいのです」 環境に適応して着替えられる表層、心がリラックスするデザイン、テキスタイルによって動き、生まれたブランドのタグには“テキスタイルの世界を、創造する人、マニファクチュールする人、志す人、愛する人、すべての人が集う森のような存在でありたい“と記されていた。 少女の頃、北海道の豊かな自然のな超音波カットや特殊プリントなど高度な技術から生まれたランチョンマットや靴下の製品たち(写真左上・下)。店内にはカラフルな小物やインテリア雑貨が溢れている。かじはら かなこ・1973年北海道生まれ。'98年多摩美術大学美術学部デザイン科染織デザイン専攻(現生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻)卒業。(株)イッセイミヤケでテキスタイル企画を経験後、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)テキスタイル科でMAを取得。2005年英国新人テキスタイルデザイナーの登竜門『TEXPRINT』のコンペで日本人として初のBreaking New Ground部門1位受賞。ヨーロッパで制作活動後、'06年よりテキスタイルディレクターとして日本を拠点に各産地や企業、デザイナーとのコラボレーションを通し、さまざまな分野で生地の提案、開発に携わっている。『グリデカナHP』http://www.gredecana.com/

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る