tonATELIER_Vol.02
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いろんなことを教えてもらった予備校のときの恩師からいただいた吉本隆明の『真贋』。先生の愛読書だったのを譲ってもらったので赤いラインが引かれた状態でした。善と悪を決めつけるのは危険だとか、ひとつのことに執着すれば、かたよった考えになるとか。モノの見方はひとつじゃない。と、哲学的なキーワードが平易な文章で散りばめられています。『真贋』吉本隆明/講談社インターナショナル『THE CLASSICA BAYRESORT(横浜)』トされると、その後インテリア雑誌や建築雑誌で社名や先輩となるデザイナーの名前を目にするようになった。 「インハウスのデザイナーが単独で特集されるんだ」 雑誌にはそのデザイナーが手がけたバーが特集されていた。吉村峰人が多摩美の環境デザインを選んだ理由は、ただひとつ、 「心地の良いカフェをデザインしたい」という動機からだった。表参道にモントークという名のカフェがある。黒い外壁と大きなガラス窓のシックな外観。ステップが巧みに使われ、客席ごとに異なった風景を楽しめる空間デザイン。このカフェに心地の良い落ち着きを感じた。高校生の吉村峰人はこのカフェのとりこになった。建物の建築ではなく、カフェをデザインしたい、と決意した。それが美大を受験した動機で、その延長線上に現在がある。 「すぐにできるなんて思わないし、好きなことばかりやれるわけがないけど、ずうっと思い続けて口に出していたら、一歩ずつだが着実に前に進むことができた」 そんな彼は多摩美ではどんな時間を過ごしたのだろうか。 「産学共同研究という課題があって、企業の方にプレゼンしたり、商品化するときのお客さんの声を聞いたり。大学の普通の授業では第三者の評価とい『THE CLASSICA TOKYO(六本木)』「隠れ家」をコンセプトにしたウエディング施設のゲストのためのウェイティングルーム。シックなデザインが煌びやかな空間への場面転換を劇的にしている。影響を受けたモノ・コト「モノの見方はひとつじゃない」デザインを語り合うといい。背伸びしてもいい。恥ずかしくても今考えていることを言葉にしてみるといい。

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