tonATELIER_Vol.02
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うのはないから、ドキドキ感があって、僕は好きでしたね。最近、大学の後輩が入社してきたんですけど、『課題を与えられて、問題を提起して、コンセプトを導き出して、デザインして、プレゼンする。大学では教授に、企業ではクライアントにですけど。で、玉砕して、やり直して、を繰り返して。カタチになっていくプロセスは大学と同じだ』と彼は言っていた。確かにそうですね」 これから美大を目指す高校生になった気分で、あの頃の自分に伝言できるとしたら、の問いかけに、 「もっとデザインについて背伸びして語り合っても良かったかな。何でカッコイイんだろうとか、作品を見せ合うとか、他人のリアクションが重要。他人の意見で自分を曲げる必要はないけど、自分が意図しない見方をする人がいて、そう見えるのならやめようという場合もある。社会人になったら友だち同士が同じ課題に向かってやるというのはないから、そういう時間はすごく貴重。どういう考えのデザインなのか、作品よりもプロセスのほうが人となりが見えますよね」 吉村峰人にとってプロセスの場こそが、アトリエといえる。 「ひとり閉じこもる時間は必要だけど、窓は開けっ放しで、風が通っている。スケッチをわざと見えるようにしておくと誰かが何か言ってくる。会社ではデザイナーだけじゃなく施工の人の目にも留まる。会社というアトリエもいいですよ。妻を相手に話すときもあるし、話のできる人がいるところがアトリエですね」Graduates' messageよしむら みねと・埼玉県生まれ。2007年多摩美術大学美術学部環境デザイン学科卒業。インテリアデザイナー。2007年株式会社乃村工藝社入社。以降、ブライダル施設を中心として店舗デザインを手掛け、人とモノと空間の関係を模索し続けている。

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