tonATELIER_Vol.04
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若手のアーティストのために主催している、いわば登竜門のようなイベントなので、僕はそれまで描いていたものを出展したんです。すると偶然僕の絵を見かけた方が声をかけてくださったんです。それが小山ギャラリーの小山登美夫さんだったのです」 学生時代はほとんど外部に出展しなかった福永の個展が、2006年小山ギャラリーで催された。画家、福永大介の誕生だった。 「僕はラッキーなんです。でも、とにかく僕は絵を描き続けるんです」なぜ美術をやりたいか 今は個人で表現できるメディア環境が豊富なように思われるが、なぜアートという手段を選んでいるのか、福永はアートという手段を目指す次世代の声を聞いてみたいという。 「3D映画はエンターテイメントとして完璧ですよね。刺激という意味での視覚表現としてはあれには勝てない。ただ美術にはなまめかしい感触があると僕は思うんです。そういう部分で絵画は秀でていると。だから絵の役割や可能性をどんどん感じているんです。大学のときに友達に借りたレゲェの音楽テープを聴いたのがきっかけなんですけど、レゲエでも、ダブと呼ばれるのが好きで、そのなかでもリー・ペリーが大好きですね。アトリエでよく聞いています。なぜかといえば、本当は「何となく」としか答えられませんよね。 それでも彼は、絵を描き続けようと決めた。卒業して絵を描くにはどんな環境があるか。バイトをしながらか、就職した方がいいか。 「僕は就職を選びました。大学の授業をきっかけに写真もやっていたので、カメラマンとして契約してくれる写真館があったんです。2年間、昼間は写真館で家族写真とか子供の七五三を撮って、後の時間はアトリエで絵を描いていました。とにかく描き続けると」 福永は、自身を「ラッキーなんです」という。繰り上げ合格で入学したこと、卒業して仕事をしながら絵を描く環境を維持できたこと。とても幸運に恵まれていると。 さらに、彼に転機が訪れる。 「やはり絵に専念しようと、写真館を辞めたんです。そんなときにGEISAIに出展してみないかと誘ってくれる方がいたんです。GEISAIは村上隆さんが10ダブレゲェのLee Perryのアルバムジャケット『extasy』 2010年 2273mm×1818mm oil on canvas courtesy of tomiokoyamagallery GEISAIが転機に影響を受けたモノ・コト「好きな理由? 音の間が不可思議でたまらない。」「日常ではない、全知全能の場所。」

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