tonATELIER_Vol.04
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のものに俄然興味がわいてきた。 「美術と観客とを結びつける仲介者になりたいと思ったんです。それにはギャラリーに就職するか美術評論家になるか美術館の学芸員になるか、この3つの選択肢が思い浮かびました。僕は自分の性格を考慮して美術館の学芸員を目指そうと決めたんです」 とはいえ彼の道のりは決して順風満帆ではなかった。まず学芸員になかなかなれなかった。ようやく採用され晴れて学芸員になってからも、自分の好みで展覧会を行えるはずもなく、悶々とした日々が続いたという。 美術館にはそれぞれのミッションがあるし、いろんな制約もある。そのなかで学芸員は、それぞれの専門に固執してはいられない。 「たとえばルネッサンスが専門でも日本の美術館ではほとんど扱えませんし、規模の小さい公立の美術館がゴリゴリの現代美術をこなしていくのは不可能です。もちろん誰にも負けない専門分 「学芸員になりたいという人は、いろんなことに興味持つことが大切だと思います。それと、好きなこと、美しいもの、または、不快とか難解とか無意味とか、いろんな感情に理屈をつけて考えてみてください。感情は理屈じゃないのかもしれないけど、フィーリングだけで作品を作っている作家さんはいないし、なにしろ理屈を考えないと学芸野があればいいのでしょうけど、僕にはそんな専門はなかった。でも美術を鑑賞する方法は援用が利くんです。だから美術館に入ってから専門を作っていくことも可能なんですよ。自分の趣味で本を読むのと、展覧会の準備のために読むのとでは、同じ本を読むにしても次元が違いますよね。最近ですよ。僕は、ようやく学芸員になれたのかなと思うようになったのは」『学芸書庫』 書籍やカタログ、雑誌など共有の美術書が保管してある。2010年に開催した『橋本平八と北園克衛展』のポスターや関連書籍。 多摩美の芸術学科では、「美術史」だけではなく「美術」を学んだ。それも「現代美術」だ。野田は今自分が生きている同時代の美術にどんどん惹かれていった。 「一般大学の先生の多くは美術史の研究者ですよね。その内容はルネッサンスから印象派までが主で日本だったら江戸時代まで。でも多摩美では20世紀以降の美術がいかに面白く、研究の対象になりうるかを説いていた。教わるのはほとんど戦後のこと。よその大学とは真逆のことをやっていたんです。しかも先生が現役の作家なので、面白いんです。世の中にはこんなにおかしなことを考えている人たちがいる、と。それから展覧会に通いましたね」 現代美術が好きになり、いろんな展覧会に通うようになる。そんな自分を、 「まるで展覧会オタクです」という。すると展覧会を作っている人そ18美術と展覧会のTheオタク「理屈」を整理したファイルのあるアトリエ「ファイルの並ぶもうひとつの展覧会。」

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