メッセージ

理事長

学校法人多摩美術大学 理事長 青柳 正規 AOYAGI Masanori

学校法人多摩美術大学 理事長

青柳 正規

AOYAGI Masanori

世界に貢献する美術とデザイン

私たちの住む地域や国や地球がいつまでも健やかであるためには、日常の毎日を見直すきっかけとなる清新な出来事や刺激が必要です。この清新さや刺激を与えてくれるのが思想、宗教、科学、藝術です。しかし、思想や宗教は高度化して複雑さを増している現代社会ではかつてのように大きな影響力をもつことが難しくなりつつあり、残る科学と藝術に対する期待がより大きくなってきました。

科学の発達は人類にとって喜ばしいことですが、発達がもたらす矛盾も大きくなっています。医療の世界に革命をもたらした抗生物質は、いつの間にか抗生物質の効かなくなった耐性菌を生んでしまいました。このことは遺伝子組み換えなどによって想像もつかないような怪物が生まれる可能性を示唆しています。科学の発達と人類社会の調和ある関係を早急に築く必要があリます。

清新さを持続するためのもう一つの分野である藝術、とくに美術は、新しい世界像を具体的に提示し、精神世界の願いや思いを形に表して人々を瞠目させ感動させることができます。また、現実の世界に隠されている情念や一人ひとりの魂の叫びを多くの人に訴えることもできます。日常生活や常識を否定することによって新たな時代を予告し、大きな感性の発露によって縮こまりがちな感性を解放してくれるのです。美術は人類の可能性を拡大し、人類の尊厳をより一層大きくしてくれる牽引車といえるのです。

そしてデザインは、私たちの社会を望ましい状態に導く具体的な提案です。生きることの楽しみや価値を認識させ、生きることへの希望と勇気を与えてくれます。道具によって人類は発展し、デザインによって人類はより人間らしい充実を遂げていきます。デザインは、絆や思いやりが希薄になり、感性と理性をないがしろにする社会に潤いをもたらしてくれるのですから、新しい社会を構想するための基本的な役割を担うばかりか、デザインが蓄積してきた探求の方法や生成の過程そのものが新たな社会構築に貢献していくことになります。

清新で調和のとれた社会の持続にとって、美術とデザインはこれまで以上にその役割を期待されているだけでなく、美術とデザインが尊重され活躍できる世界の実現に貢献したいと、多摩美術大学は考えます。

青柳正規理事長 略歴

1967年
東京大学文学部美術史学科卒業
1991年
東京大学教授
1992年
博士(文学)
その後、東京大学総合研究資料館長、学部長、副学長を経て、2005年退官
2005年
国立西洋美術館館長(~13年)
2008年
独立行政法人国立美術館理事長(~13年)
2013年
文部科学省文化庁長官(~16年)、国際学士院連合副会長(~17年)
2017年
山梨県立美術館館長
2019年
学校法人 多摩美術大学理事長(就任)、奈良県立橿原考古学研究所所長
2020年
石川県立美術館館長
2021年
公益財団法人せたがや文化財団理事長
2022年
東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京機構長
主な受賞歴
2006年
紫綬褒章受章
2007年
日本学士院会員
2017年
瑞宝重光章受章
2019年
イタリア・ポンペイ市名誉市民
2021年
アメデオ・マイウーリ国際考古学賞、文化功労者

学長

多摩美術大学 学長 内藤 廣 NAITO Hiroshi

多摩美術大学 学長

内藤 廣

NAITO Hiroshi

水や空気のような大切なもの

多摩美術大学は90年近くの歴史を持ち、その間数々の優れた芸術家やデザイナーを輩出してきました。先生方や先輩たちによって培われてきた自由な校風が、創造の花を咲かせる豊かな土壌になっているのだと思います。

少し見回しただけで現代社会にはさまざまな問題があることがわかります。戦禍が止まない世界、地球温暖化や気候変動、コンピューター技術の飛躍的な進化、足元を見れば超高齢化社会の到来、激動の時代をみなさんは目の当たりにしているのです。これらを思い浮かべただけで気が重くなります。

しかし見方を変えれば、皆さんの時代が到来したということもできます。旧来の考え方は役に立ちません。みなさんのような若い世代が活躍する時代が来ているのです。いつの時代も、どんな世界でも、創造は人の心を救い明日への希望を抱かせる大切な力です。人が人であるためには、創造はそれなしでは生きていけない水や空気のような大切なものです。

これまでも困難な時代はいくつもありました。過去の成果を見れば明らかなように、本学はその都度それを創造の力で乗り越え、素晴らしい成果を上げてきたことが分かります。共に新しい時代の新しい文化を創造しようではありませんか。みなさんの若い力を歓迎したいと思います。

内藤廣学長 略歴

1974年
早稲田大学理工学部建築学科卒業
1976年
早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修士課程修了(工学修士)
フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン)勤務(~78年)
1979年
菊竹清訓建築設計事務所勤務(~81年)
1981年
内藤廣建築設計事務所設立
2001年
東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学助教授(~02年)
2002年
同研究科社会基盤学教授(~11年)
2010年
東京大学副学長(~11年)
2011年
東京大学名誉教授
2022年
公益社団法人日本デザイン振興会会長
2023年
多摩美術大学学長(就任)
主な受賞歴
1993年
芸術選奨文部大臣賞新人賞
日本建築学会賞
2001年
毎日芸術賞
2020年
芸術選奨文部科学大臣賞