メッセージ

学長メッセージ

多摩美術大学 学長 建畠 晢 TATEHATA Akira

新たなる挑戦

いま世界にはグローバリズムの潮流が押し寄せてきていますが、その一方では民族的、宗教的な不寛容な思想が渦巻いてもいます。また私たちの生活を取り巻く情報環境は大きく変容しつつあり、AI(人工知能)などの新たな技術が一気に台頭してきてもいます。芸術の領域もそうした激動する時代状況と無縁ではありえないでしょう。多摩美術大学は80有余年の歴史を通じて、常に芸術の先端的な動向を切り開いてきたと自負していますが、変化の度合いを速める昨今の社会を前にして、挑戦者としてのさらなる意欲をもって本学ならではの使命を果たして行こうと決意を新たにしているところです。
一昔前までは大学は象牙の塔といわれていました。現実の社会から切り離された場所で、何の役にも立たない学問のための学問、芸術のための芸術にいそしむ機関だと揶揄されていたのです。しかし私は必ずしも象牙の塔が果たしてきた役割を否定しようとは思いません。大学が社会に対して積極的な使命を果たすこととは、何も時流に身を添わせたり支配的な体制に迎合することを意味しているわけではないのです。そこには時に批評的な眼差しをもって状況を捉え、また時代を越えて維持しなければならない価値を見極める自立した精神が息づいていなければなりません。
もう一つ重要なことは、変化するばかりではなく文化的な多様性をも増大させつつある社会に対して柔軟に向き合い、さまざまな課題を解決しうる視野の広さを持つことです。本学が専門学科の枠を超えたPBL(Project Based Learning)教育に取り組んでいるのも、どのような状況にも適切に対応しうる応用力の育成をはかろうとしているからなのです。
多摩美術大学は見方次第ではアートの道を目ざす者たちが集う親密なるコミュニティといえるかもしれません。創立以来本学が掲げてきた〈自由と意力〉というモットーは、志を共有する若者たちを鼓舞し、創作や研究活動への積極的な取り組みを誘い、また社会に羽ばたいてからの活動の支えともなることでしょう。私たちは目を輝かせて本学への入学を目ざしている“未来の同志”の皆さんの情熱に大いに期待しています。