多摩美術大学 学生ハンドブック2021
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 大学とは“学府”である、“学ぶ場所”であると同時に、志を同じくする者同士が集い、互いに切磋琢磨するコミュニティーでもあります。とりわけ広い意味での芸術系の大学である本学では、学ぶことと創作すること、作品を制作することとは深く結びついており、きっと皆さんもアーティストやデザイナー、パフォーマー、研究者、プロデューサーなど、明確な目的をもって学生生活を送ろうとしているのではないでしょうか。 本学ならではの優れた教師陣による充実した教育カリキュラムは、そうした学生諸君を迎え入れる恵まれた環境であるに違いありませんが、しかし与えられたことだけを学び、自分の専攻の知識や技術だけを身に付けることで事足れりとする受け身の姿勢でいたのでは、さまざまな難題が渦巻いている実社会に出て活躍するための素地としては決して十分とはいえません。むしろ共通科目やクラブ活動などを通じて他の専攻の教師や学生たちとも交流し、作品発表や企業との連携プロジェクトなどさまざまな機会に外の社会との具体的な接点を体験するなど、積極的に自らの視野を広げる努力もしていただきたいのです。 私は何も大学が“象牙の塔”であることを否定するつもりはありません。“学問のための学問”、“芸術のための芸術”の場はたしかに独善性に陥りがちかもしれませんが、しかし今、不寛容な思想が台頭しつつある世界の状況への冷静な批評精神を維持するためにも、安易な効率主義によって排斥されてしまってはならないのです。そう、アートの道を目ざす者としての誇りを持ちながら、キャンパスの外の状況にも深い関心を抱いている・・・・。いささか大袈裟な言い方になってしまいますが、このハンドブックがそのような有意義な学生生活を送るための一助となることを願う次第です。恵まれた環境を生かすために学長 建畠 晢- 3 -

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