日だまりが音もなく移動する
久保 美夕
作者によるコメント
朝、暖かい光で意識が戻ってくるとき、自分が目を覚ましていることに気づく。まだ何処で寝ていたのか思い出せないくらいに朦朧としていると、見慣れた部屋のカーテンでさえ真新しいものに見えて驚くことがある。
そんな体験を作品にするために現実と虚構をテーマに制作してきた。日常生活で目にするありふれた者たちは知っているようで知らないものばかりだ。もう一度見つめ直すためには少しの違和感が必要だと思う。『違和感』を透かして見たありふれた者たちは、現実と虚構の狭間をふわふわ漂ってどんな姿になるのだろうか。
担当教員によるコメント
日常生活の中で違和感を感じる事が現実と虚構を認識する上に必要だと言う久保さんのこの作品は、その違和感を巧妙に表現していると思う。作品のサイズの切り方といいカーテンの質といい、ガラス器に活けられているマーガレットも爽やかそうに見えているが、何か変な感じがする。それでついつい見入ってしまい、まんまとこの作品の中に取り込まれる感がある。日本画の重たい素材で描くレースの様な布は芭蕉布の様な重みがあり、その上の布も麻布の様な重量を感じる。そこから透けるマーガレットの不穏な様子の抒情性は日本の特性にのっとったものだと思う。日本画の画材をこの様に使える力を持った作品だと思う。
教授・宮 いつき
- 作品名日だまりが音もなく移動する
- 作家名久保 美夕
- 作品情報素材・技法:岩絵具、水干絵具、典具帖紙
サイズ:H3230×W1725mm - 学科・専攻・コース
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