Alice
塚本 紫乃
作者によるコメント
Alice。世界で広く知られている児童小説「不思議の国のアリス」、原題“Alice’s Adventures in Wonderland”のために制作された欧文書体である。書体とは永い歴史であり、その形になった背景が必ず存在する。生まれた土地や時代によって変化する書体の過去を今一度見つめ直し、二つの時代と複数の国の間に生きる書体を作ることをテーマとした。併せて原文を用いたコンクリートポエトリー(具体詩)も制作している。
担当教員によるコメント
18世紀半ばのトランジショナル・ローマンであるBaskervilleと19世紀初頭のモダン・ローマンであるBodoniとの中間に位置する新たなローマン体を目指した、マニアックで挑戦的な新書体制作の試みである。幾何学的な構造を基本としながらもストロークの各部位にやわらかな曲線を導入し、最終的には親しみやすい本文書体として完成した。そのイタリック体もまた、同時代的な特徴を引き継ぐことに成功している。書体見本帳では、もともと奇抜なレイアウトだった19世紀の『不思議の国のアリス』初版からインスピレーションを得つつ、設計した新書体を使ってより大胆で実験的な組版を試みている。活字書体の歴史的な考察から発想し、本文書体としての実用的な機能を考慮しながら細部にさまざまなオリジナリティを加え、伝統と新しさを融合した斬新な見本帳のレイアウトに到達した。
非常勤講師・山本 政幸
- 作品名Alice
- 作家名塚本 紫乃
- 作品情報タイポグラフィ
技法・素材:紙、布、ケントボード、Glyphs、Illustrator、InDesign
サイズ:H600×W425×D45mm - 学科・専攻・コース
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