WASTE IS STORY.

中石 緑

作者によるコメント

一度は要らなくなって人々に捨てられていったものたちですが、その中にこそ膨大なストーリーがあります。
それらはさらに、それぞれに時代性を孕んで堆積していきます。

“縄文時代の貝塚"と"現代の処分場”の写真を対にした、グラフィックを制作しました。

ゴミは暮らしを映す鏡。
この作品が、今在るものへの視線も変わるきっかけになったら嬉しいです。

担当教員によるコメント

先史時代、古代人達の膨大な年月にわたる生活廃棄物の投棄によって出来上がった貝塚。そして、現代社会における大量生産大量消費の象徴としてのゴミ処理場。時間と成り立ちに大きな隔たりが存在する両者の間に、中石緑は人類が営んで来たストーリーの普遍性を見出した。
写真をベースに、アクリル絵具やメディウムでペイントされたフイルムを何枚も重ねる〝堆積のクリエーション〟により、各12mに及ぶ異時代の壮大な地層を表出させる。圧巻のビジュアルだ。しかし、この斬新な実験によって生み出された美の深層に一抹の恐怖を僕は感じとった。言葉による表現はどこにもない。けれども鋭い警鐘のソーシャルメッセージが伝わってくる。見事なグラフィックデザインだと思う。

教授・澤田 泰廣