弔い/FUNERAL

たなか めいか

作者によるコメント

古代エジプトでは、人間や「神の化身」とされている動物は、死後に再生・復活をし、永遠の生命を得ることを望み、手厚い埋葬が行われ、最上の方法でミイラづくりを完成させました。そして華美な棺桶が作られてきました。命は平等であり、来世で復活できる条件も平等であると私は考えます。人間や「神の化身」の動物たちは丁重に扱うのに対して、昆虫たちも自分たちと同じように同等の命を持っているにもかかわらず、「虫けら」という語や、昆虫の名を用いた人を侮蔑するような言葉が多く見受けられるように虫たちの扱いはとても軽んじられて、亡くなって塵になって来世で復活できる肉体がない。ならば肉体を保管する棺を作る必要がある。棺桶は一番内側が幼虫に模し、真ん中が蛹を模し、外側を成虫に模したマトリョーシカのような三重構造になっている。

担当教員によるコメント

初見はまるで博物館に陳列しているミイラを収めた壺のようである。しかし注意深くそれらを見ると、すべてが新しく作られたオブジェと気付き驚かされる。エジプトやミイラに対する作者の思い入れは深い。マトリョーシカ状のケースに収められている昆虫のミイラに関しては、作り方を様々な文献を調べ試行錯誤している点には共感が持てる。またケースの内部や外部の全面に書き込まれたヒエログリフの”呪文”の細かさに、また驚かされる。工芸品的な側面に注目されるが死者への思いに対する作者の”儀式”としてミイラ作りの行為がある事を忘れてはならない。

教授・原田 大三郎

  • 作品名
    弔い/FUNERAL
  • 作家名
    たなか めいか
  • 作品情報
    立体
    技法・素材:木、ガラス、はんだ、石、アクリルガッシュ
    サイズ:最大のH358×W422×D172mm、最小のH76×W42×D50mm
  • 学科・専攻・コース