軸になる辺

原 佳史

担当教員によるコメント

作者は、鉄を素材として幾何学的図形を立体的に展開した大型作品を作り続けてきた。それら一連の作品は「自ら定めた図学上の規律」に基づいて展開するものであったが、卒業制作に於いては「立方体の一辺を軸として、分割した形態を回転させるフォルム」となった。
通常美術作品の多くは、その制作意図が問われたとしても、制作方法について問われる事はない。特にこの作品にみられるような幾何的な作品は、極力「手跡」を消し去り工作方法を不問とする事が殆どだ。しかし作者は、自らの身体能力の限界と、最小限の工作機器で工作可能な最大限の大きさを求める事で、あえて手仕事としての工作跡も受け入れた作品を目指した。その制作は試行錯誤の連続であったが、清々しい挑戦的な労作となった。

非常勤講師・関井 一夫