W.ユージン・スミスの写真美学とその変遷

室井 萌々

作者によるコメント

W.ユージン・スミスは、1930年代から70年代にかけて活躍したアメリカのフォトジャーナリストである。『ライフ』誌をはじめとする数々のグラフ雑誌に掲載され、常に被写体の側に立った視点から撮影を続けた。本論文では、スミスの活動を初期、中期、後期に分類し、スミスの写真に対する美学——言わば、写真に対するまなざしの変遷やスミスの制作活動に影響を与えたものを解き明かすことを試みた。

担当教員によるコメント

アメリカのフォト・ジャーナリスト、ユージン・スミス(1918-78)の初期から晩期までの、写真美学の変化や、そこに作用していた問題を、室井さんは体系的に考察している。その中で室井さんは、ジャーナリズムとは何かというスミスの根本的な問いや、フォト・ジャーナリズムを芸術の域にまで高めようとするスミスの思いなどに迫っていく。室井さんは、スミスに関するさまざまな英語文献を読みこなすとともに、海外や国内のいくつかのアーカイヴ資料も調査している。そうした高い調査力も発揮された本論は、包括的なスミス研究として堅固な成果を上げている。

准教授・大島 徹也