Manzaishi/かわいい子供たち

井上 大敬

作者によるコメント

一つの肉体に閉じ込められた私たちの喜劇性について描こうと思いました。
二人とも終始バカみたいな顔をしているところが気に入っています。

担当教員によるコメント

子供が大人になる時、さまざまな痛みを伴う通過儀礼のような出来事がおこる。この作品は日常のなかに秘められたその祝祭の発端と経験の痛みを、美しい線で描きだしたアニメーションである。何よりも素晴らしいのは、名状し難い感情の蠢きが決定的なフラグメンツの羅列によって詩的な領域へと結実していることだ。我々がこの短い映像を安易に共有しその場を立ち去ることができないのは、宙吊りにされたイメージのもの悲しさ、物語ることを拒むような強迫の到来、そういった領域と静かに向き合おうとした作家の覚悟に胸を打つからだ。重要なことは、「痛み」への視線が、彼のもう一つのテーマである「笑い」と共にあることだろう。不条理から我々は逃れられない。それが人というもの本質だからだろう。

教授・石田 尚志