片目による連続/現像による離散

島田 理央

作者によるコメント

コンクリートの硬い壁からは無機質で寂しく、冷ややかな印象を受けます。しかし、砂やセメントを練り、太陽の光で乾燥させ、そこで暮らす人々のことを考えると、次第に熱がこもり熱を感じるようになるのです。

片目を瞑り、ファインダーを覗くことで盲目性が得られ、その盲目性によって普段は見えないものが見えるようになります。そのように、離散的で冷たい記録を繋ぎ合わせることによって、そこに連続性が生まれ、それまでは感じなかった熱を感じるようになるのです。
デジタル(=離散的)な記録とアナログ(=連続的)な記録を行き来することによって生じる熱を持ち続けながら制作を続けています。

カメラを持って外を歩き、じっとファインダーを覗く。

担当教員によるコメント

コンクリートの造形物に風景の写真が転写されている。わずかな隙間や側面にその写真は分散されており、様々な角度から作品を覗き込むことで見ることができる。「見えにくいものほど凝視することによって逆によく見えてくる」と島田さんは言う。散在している造形物は一つ一つが不思議な構成で組まれており有機的だ。4枚繋ぎの平面作品も一見規則的なようでそれぞれ微妙に傾斜角度が異なっている。コンクリートは型取りで造形するため、素材としては非常に扱いづらい。そして重い。型を取り、ざらざらした表面に写真を擦り付ける。それをひたすら繰り返す。肉体的にハードな反復である。この不思議な視覚的イリュージョンは、生々しい身体的行為によってできている。無機質な素材だからこそ、生きた人間の気配が際立って感じられる作品だ。

教授・日野 之彦

  • 作品名
    片目による連続/現像による離散
  • 作家名
    島田 理央
  • 素材・技法
    ミクストメディア/ミクストメディア
  • サイズ
    1825×900×40mm/可変
  • 学科・専攻・コース
  • 担当教員