Crepuscular
牧野 優希
作者によるコメント
生活するなかで触れる時季特有の風や土の匂い、光や湿度など、外界への観察から得た体感を表現した。描くことで発生する抽象的な筆致や絵の具の現象に触発され筆を進めた。
3つの連作のタイトルのcrepuscularとは、イヌやネズミなど薄明や薄暮の時間帯に活動する動物のことだ。薄闇の時間を歩き想像を膨らませる自分を、薄明薄暮性の動物になぞらえた。
卒業制作では大きなサイズの絵に取り組むことができ、経験を重ねられた。今後も制作に励んでいきたい。
担当教員によるコメント
作品タイトルの「Crepuscular」を直訳すれば薄明薄暮性であり、昼行性、夜行性に対する言葉である。牧野は2年生の時から、自分が住み、慣れ親しんだ土地をテーマに、比較的小さな十数枚の画面で構成された作品を制作していた。それらは目に映る風景そのものでもなく、土地に宿る何か、あるいはそれに紐づく自らの姿を映し取った「地図」のようにも見えた。卒業制作の本作は、観察から得られた感覚と、絵画を制作することによって起こる自明としての画面からの問いかけ、あるいは触発を、あたかも薄暗がりの中でうごめく小動物のように全神経を集中し、さらに自覚的な絵画の言語によって対峙し続けた。組作品の性格を持ちながらも、それぞれが独立した絵画としての抽象性、自立性を獲得し、牧野の世界観の現在を十分に表現している。
教授・小泉 俊己
- 作品名Crepuscular
- 作家名牧野 優希
- 素材・技法キャンバス、油彩
- サイズ1455×2273mm、1621×1303mm、1303×1621mm
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員