蕭蕭/霏霏

横山 祐文

作者によるコメント

多摩美に来なければ「鉄」に興味を持つことはなかったと思う。
4年間の出会いに感謝して、これからも単純に、愚直に、丁寧に、作品を作り続けていきたい。

担当教員によるコメント

横山の本籍地は絵画である。今回の作品の着想と着地点はそれ故であると言えるかもしれない。鉄を切断する方法の一つにガス溶断がある。アセチレンガスで溶け落ちるほどに温められた箇所に圧縮酸素を当てると、溶解した鉄が酸化物となって吹き飛ばされ、その光跡が同時に切断面となる。彫刻家は、求める形態に向かって切断や溶接などの行為を繰り返す。横山はその過程で発生した通常であれば排除されるはずの酸化物を、メディウムとして再発見した。この溶断による酸化物を四角いフレームで受け止め、重ね続けることで固着させる。そして最後にそのフレームを外せば、裏から描くガラス絵のような酸化物の塊が現れる。同時にそれは、支持体とメディウムの境界のない構造を持っていることに気づかされる。果たしてこれを絵画と呼ぶべきか、あるいは。

教授・小泉 俊己