room6/room5/room7

樋口 歩花

作者によるコメント

ドローイングを続ける中で人が不在の部屋や人物が居た痕跡などに惹かれること、描いていると落ち着く事に気がつきました。これらのドローイングを元に「room」という版画のシリーズを制作しています。この作品も「room」シリーズの一環として制作しました。部屋は暮らしへの向き合い方が色濃く現れる写し鏡の様な場所であると思っています。今回の作品は、祖母が亡くなったことで無人になった家を片付けた際、祖母が丁寧に暮らしていた痕跡が残っていて無人にも関わらず祖母の人となりが強く感じられた事が発想の元となっています。部屋の中で時間が永遠に止まっているイメージ、時間がループしまた部屋に戻ってくるようなイメージで画面を構成しました。

担当教員によるコメント

作者である樋口のコツコツと積み上げられるイメージは最終的に透明感のある世界へと広がりをみせます。卒業制作では、樋口の世界観を「部屋」をテーマに3部作にまとめていきました。3つの部屋には、各々のテーマが封じられていますが、共通してそこには植物が配置されており、ある意味唯一の生物ともいえます。他に動物も幾つか配置されてはいますが、これらには魂を持っているようには感じられません。つまり、無人の家の中においても、植物だけがどんどん成長し続け、嘗ての場の印象が変化していくことに焦点を当てています。反復されるコンテンツイメージは、繰り返される時間の流れにおいて、変化し続ける動きを表現しているのかもしれません。樋口の作品から感じられるリッチで澄んだ精神性を高く評価し、より完成度を高めながら展開されることを楽しみにしています。

教授・佐竹 邦子