愛は完全な自己放棄
馬場 さくら
作者によるコメント
私の体を弄った人たちは男性でした。私が子供を生みたくないと言って、否定してきたのも男性でした。私が性行為を断り、怒っていたのも男性でした。
同じ人間だと思っていたけど、どうやら男女はかなり異なる生き物で、私には理解し得ない考えがきっとあるのでしょう。それはきっとお互い様で、彼らも私を理解できないと思っていたのではないでしょうか。
でもね、否定するのも疲れたから、疲れたでしょうから、少しだけ分かり合う努力をしませんか。せっかく同じ人間に生まれたなら、できるだけ愛をもって接する方がハッピーじゃないですか。どうせお互い100%理解することができない関係なら、愛し合いましょうよ。
なんて、全部綺麗事ですけどね。私はまだ怒っているし、許せないし、怖いから。
担当教員によるコメント
男女の生殖器の解剖学的図柄を、木彫を主体としレリーフ状彫刻二点に展開し、注意深く間隔を取って設置された本作は、自身にとって切実な作品を作ろうと努めてきた作者の、やっとたどり着いた核心であろう。ジェンダーや性差、性的嗜好といった問題を反映する作品は以前より多く見られ、女性や性的マイノリティが発言をしやすくなった時代なのかもしれない。しかし作者にとって本作は、記憶の襞をめくる様に自身と向き合い、時間をかけて取り組んだ最初の制作であり、このテーマに付随しがちな薄ら笑いや、謎の弁明をする男性にも気を削がれず、忍耐強く貫いた挑戦であった。黙されていた言葉や疎ましく思われていた気持ちを、紐解くように制作をするその重要性に気づいた大事な契機でもあり、今後の展開を期待する。
教授・笠原 恵実子
- 作品名愛は完全な自己放棄
- 作家名馬場 さくら
- 素材・技法ミクストメディア
木、布 - サイズH800×W1500×D100mm(左)/H2400×W1500×D100mm(右)
インスタレーション サイズ可変 - 学科・専攻・コース
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