境界

YANG MInglan

作者によるコメント

歯はある痛みの象徴であり、その痛みは足をぶつけた猛烈の痛みではなく私にとってそれは「生」と同じような不愉快を感じていて長く長く続いて行く痛みである。
しかし、絶対に「希望」みたいなせめて苦しいではない空間が存在しているのは信じている。

担当教員によるコメント

真二つに切断された肌色の石塊。その上部は皺がれて鈍く光を閉じ込めている。近づいてみると、皺の頂きからは等間隔に「歯」が生えている。無論フェイクであるがリアルな作りと黄ばみ具合が無機質な空間に微かな生気を与える。二つの大理石は自身の表象であろうか、黒錆の鉄板と石棺のような室礼が死体を連想させ重々しく冷ややかで、湖底に沈殿する泥のような静寂を湛えている。相対する垂直面にはそれぞれ鏡が埋め込まれて合わせ鏡となっているのだが、石同士の微妙な距離によって無限の連なりを見る事は許されてはいない。しかしそこには透明な空間が確かに存在しているはずなのだ。

教授・水上 嘉久