Pixel Pathways: AI-Inspired Travel Visions

小林 香鈴

作者によるコメント

AIを使用して旅行ガイドを制作した。写真のみならず文字のかたちや作品タイトルまでもをそれに委ねた。
AIから出力される空虚で不安定なイメージは、まるで私の心のようであった。それらを整え組み合わせ、ページを埋めていく作業は、底なしの劣等感から自分を救い出すことと同義だった。
失望と祈りをおかしさで覆ったこの作品は、私の魂そのものだ。

担当教員によるコメント

表紙から中身まで、すべての見出しや解説文、写真、図版類は、AIが生成したものを小林さんが整え、レイアウトしたものである。一見ありふれた、いわゆる旅行ガイドそのものの誌面を装っているが、その内容はこの世のものではない。その空虚さにもかかわらず、読めもしない内容を味読しようとする私たち。本作を通じて私たちは、旅行ガイドというジャンルそのものや、それを実現する編集デザインの力、それによって醸成される読者の欲望、あるいは取り上げられる事物の歴史性や文化性といったものの意味を、これ以上ないほど客観視する。その意味で、本作は旅行や出版、デザインという営為はもとより、私たち自身の批評にさえなり得ている。そしてまた、このような作品を卒業制作として設定し、自分の内心とひそかに結びつけて制作に臨んだ小林さんを思う時、本作は極上の文学作品にもなっている。

准教授・佐賀 一郎