二十四節気七十二候

河野 優香

作者によるコメント

日本人の美意識の根本にある概念として自然があります。
日本人は太古の時代より自然に対して美を見出してきました。自然の持つ得体のしれない大きなエネルギーをベースに価値観や思想が構築されています。現代にも受け継がれている日本の美意識は、日本という風土が生んだ文化によって独自に形成されています。

グラフィックデザインを学ぶ中で、自身の美意識と幾度となく対峙してきました。そのような中で日本人として生まれ、日本でグラフィックデザインを学ぶことの意味を残したいと思い、細やかな自然の移ろいに目を向け、鳥や花、気象などの様子で季節を表現した日本人の豊かな感性が宿る二十四節気七十二候という暦を、昨今失われつつある日本の美しい四季に想いを馳せ、私なりに咀嚼し表現しました。

担当教員によるコメント

二十四節気七十二候には、季節の折々の気象や動植物の変化が端的な言葉であらわされている。それを自分の感覚で咀嚼して、抽象画のようなビジュアルで形にし、72点の連作で一年間を表現した作品。踊るように配置された言葉と、その言葉のイメージを膨らませたビジュアルとの相乗効果が気持ちよい。作者が紙の前に立ち、感覚を研ぎ澄ませ、筆を持つ手を動かし、切り貼りし、つまりは自分の体を最大限使ってイメージを生み出していることが実感できる。作者も鑑賞者もまた、自然界のなかにいる存在だと思えてくる。

教授・服部 一成