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井出 真季花

作者によるコメント

物理学においての「空間」の定義として、広がりを持った連帯感とあるが、私の思う「空間」とは、固定されて動かすことのできないもの。ファッションを通して、纏うことで持ち運ぶことができる空間を制作した。

担当教員によるコメント

井出さんは、着衣を通じ物理的な空間の可搬性や移動性について初期から慎重に捉えようとしていた。デジタルとフィジカルの空間を行き来することが一般的になった今の時代を表現するアプローチではないだろうか。素晴らしかったのは、出来上がった造形表現だけでなく、テーマに対し、時に「反証」に近い作業を自ら行なっていたように思う。悩み続けながら静かに前進するのだが、天性の馬力と速度を持っている。その制作プロセスは、周りの人に良い影響を与えていた。美術は、主体性を重んじる。解は、作品を通じてしか出てこない。本人しかわからないこの本質的な仕事は、単独で孤独だ。そして、その重要な仕事の一つが、誤り訂正の精度をいかに上げ、そして制御できるかどうかだ。井出さんは、卒業制作を通じて大切な技と術を手にしたのかもしれない。

教授・藤原 大