江本 葉那

作者によるコメント

「気配」とは、生命力の残留、蓄積だと思う。そこに誰かがいた証が、その物や空間に憑依し、あの心地悪さや懐かしさを感じさせるのだろう。私がそれを見えるようにするのなら、こう作ってみようと思う。

担当教員によるコメント

メディア芸術コースでは毎年、関係性をモチーフやテーマにした優れた作品が生まれるが、江本葉那の本作品もその系列に連なるものである。毛糸を捩って作られた形態が網の目のようにして空中からぶら下がっている。その様子を見たとき、わたしはカナダの原生林のなかで苔や地衣類が高い木の枝からぶら下がり、それらが互いの繋がって延々と森の奥へと伸びている風景を思い出した。森の奥には手品師がいて、その帽子から次々とウサギが出現する・・・そんな想像を楽しむことのできるユーモアがあるが、本作はわたしたちの意識の下に張り巡らされている関係性を、捩る技術によって知覚させる力があり、その意味で関係性の媒体となっているように思う。

教授・港 千尋