舞踊家厚木凡人の初期作品群における“環境”
相嵜 颯
作者によるコメント
本論文では舞踊家厚木凡人の初期作品群に見られる鑑賞空間への意識について当時の美術界を席巻した“環境”概念から論じた。その際、一次資料の調査に基づく作品の具体的分析を行った上で厚木に影響を与えたE.A.T.、イヴォンヌ・レイナー、マース・カニングハムの三者における“環境”の萌芽を捉え、各々との比較を行った。そして、厚木の舞踊に対する同時代的受容の整理や他の芸術領域との関係を分析し、厚木独自の空間的意識と“環境”の繋がりを多角的に探った。
担当教員によるコメント
未だ研究が進んでいなかった前衛舞踊家・厚木凡人の代表作を独自の観点から分析したこの論文は、東野芳明賞にまことにふさわしい優れた研究である。
受賞者は、文献調査、厚木を知る関係者からの聞き取りとともに、ご遺族宅を訪ねて残された資料にアクセスし、断片的にしか知られていなかった厚木の革新的代表作品3点を鮮やかによみがえらせて、それらの芸術的価値が再評価される契機を作り得た。
さらに同時代美術のキイワードである「環境」を起点にして、日常と作品の境界を横断する厚木の演出、舞台美術、音響を総合的に、スリリングに読み解くことで、多分野にまたがる当時の前衛精神の一端を描き出した成果を高く評価する。
教授・光田 由里
- 作品名舞踊家厚木凡人の初期作品群における“環境”
- 作家名相嵜 颯
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- 担当教員