辰野登恵子と「絵画空間」
川上 知也
作者によるコメント
戦後日本の画家である辰野登恵子について、「空間性」に着目しながら考察を行なった。第1章から第2章では、辰野の出発点となる学生時代からミニマルなシルクスリーンを制作した1970年代、再び絵画へと戻る1978年以降の展開について記述しながら辰野の「絵画空間」への意識について考察した。第3章では「絵画空間」をめぐるモダニズムの言説と、それを乗り越えようとした1970年代後半以降の作家との比較を行ない、辰野の美術史的な位置づけを試みた。
担当教員によるコメント
本学の油画の教授でもあった辰野登恵子についてのモノグラフである。日本の戦後美術に関しては、当学科では特にもの派ないしそれと関係の深い作家に関心を示す学生が多いように見受けられるなか、辰野を取り上げた点が、まず目を引いた。川上さんは特に「絵画空間」という問題に焦点を当て、1980年代に重点を置きつつ、初期から1990年代までの彼女の仕事を考察している。川上さんはそこから、辰野が目指した彼女独自のモダニズム超克の試みを明らかにしていく。モダニズム的な絵画空間ではなく、かといって伝統的なそれでももちろんない、辰野自身の「主観的」で「リアリティ」のある絵画空間をいかに彼女が追求し実現していったか。川上さんのその考察は、大いに傾聴に値する。
教授・大島 徹也
- 作品名辰野登恵子と「絵画空間」
- 作家名川上 知也
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