生まれたてのプロダクト

寺島 凛

作品解説

「ベビーシェマ」という赤ちゃんの身体的特徴を生き物ではないプロダクトに付与すると、生き物の赤ちゃんに感じるような可愛さ愛おしさを感じることができるのかという疑問から制作しました。生まれたての赤ちゃんプロダクトが大人へすくすく成長する過程を想像することで、消耗されているモノとの向き合い方を考える機会になる作品になればと考えます。

作者によるコメント

身の回りのものの赤ちゃんを制作しました。生き物でなくとも「赤ちゃんらしさ」を感じると、途端に愛おしく可愛らしく思うことに驚き、ベイビーが持つ形態の魅力を改めて感じられた制作となりました。
なにものにも赤ちゃんの時代があることを想像し、大切に、優しく向き合っていきたいです。

担当教員によるコメント

かわいいを卒制のテーマにしたという学生は、毎年一定数出てくる。しかし、多くの場合、世の中にあるかわいいを再生産してしまい、オリジナルな魅力を生み出せないことがほとんどだ。寺島さんが、それらの人と違ったのが、かわいいのひとつの根拠であるベビーシュマという概念を見出したこと。加えてそれをプロダクトに応用したことだ。我々が暮らしている日常には、人や犬や猫、鳥そして植物などの生物と、道具や家具、家、道路などの無生物が存在している。その分別に対して、ある意味揺らぎを与えるような問いかけをしているのがこの作品であると言えるだろう。初期段階から方向性をぶらさずに、丁寧に検証を進めていったところも最終的な完成度につながった。

教授・永井 一史、非常勤講師・岡室 健