混虫記

米谷 颯太

作品解説

昆虫と工業製品の見間違いをきっかけとした作品。モノの動きや色、形などが影響して虫と見間違えるという経験が誰しもあると思います。特に形について考えると、機能が左右対称であることや個体差があるという事などが鍵になっていると分かり、それらの条件は昆虫と、見間違えた日用品に当てはまると考えました。

作者によるコメント

大学の3年次の前期に文化人類学の授業で“死んだ蟹を見て異星人はどのようにしてそれを生命体と判断するのか”というアメリカの大学で行われた授業の話を聞きました。
その時に、機能が左右対称であることや個体差があるという事が鍵になっている事が分かり、その二つの条件は昆虫と、見間違いを起こす日用品に当てはまると考えました

展示では 1列目は見る人の導入のために形状を変えた。一列目のそれぞれの箱には一つずつ、自分が混虫記を作っていく中での気付きやルールを混虫の配置で表現した。
その導入の後に約 200 匹の混虫の立体標本を展示。
展示什器自体も虫の要素を感じられるように設計しました。
必要や目的に応じて形を少しずつ変えてきた人工物と、生き残る進化の過程で形を変えてきた虫。
この展示を通してここまでのモノの捉え方や考え方を共有したいと思いました。

担当教員によるコメント

米谷のこの作品は3年の最初の課題での作品「混虫採集」からはじまった。
そこからさらに発展させて、日常品に昆虫の足を組み合わせた立体の「混虫記」に昇華させた。
什器も虫の足を意識してデザインするなど、展示へのこだわりがすごい。これを1人でつくりあげたのは驚異としかいいようがない。
他の学校や学科の卒制もみたがこんな質と量を兼ね備えたものなんて、まずない。デザイン科の卒制のあり方としてすごい究極の答えを見た気がする。
4年のほぼ最初から制作し続けて、ブラッシュアップし続け、教室をアトリエとして(最終的には教室の1/4くらいは使用していたかもしれない)朝から夜まで制作。
その姿勢と背中は3年や同級生にも確実に大きい影響をあたえたことだろう。 
卒業したら広告代理店のアートディレクターとしてあたらしい世代のクリエイティブを切り開いていくだろうがデザインの巨匠といわれるひとびとを颯々とかわしていってほしい。先輩にも同級生にも後輩にも影響をあたえた。もちろん教員にも。
これからが楽しみだ。米谷颯太。この名前は覚えておいた方がいいと思う。卒制は最高の評価でもあるINTEGRATED GOLD受賞、
全体の成績も優秀で統合デザイン学科の総代にも選ばれた。必要な努力と卓越した実力。こりゃ、かなわん。おめでとう。
やっぱりデザインの神様はどこかでちゃんとみてるね。あ、そうそう、最後に。
統合デザイン学科にはいってきてくれてありがとう。

教授・佐野 研二郎、非常勤講師・榮 良太、非常勤講師・小杉 幸一