命を纏う形、或いは、命に形を与える。
岡野 優子
作品解説
木や竹のような、繊維質の塊に似た質感は、熱溶解積層方式の3Dプリンターと漆によって作られている。数理的な正確さで積み重ねられた樹脂の隙間が、漆によって引き立てられ、人工的な造形物に自然素材のような風合いを持たせている。工芸よりも工業的、工業よりも工芸的な質感を具現化した。着色や変色をしていない漆の茶色は、命の色だと思う。漆の命を樹脂によって実体化し、漆によって樹脂に命を纏わせた。
作者によるコメント
漆という素材は、漆の木に傷をつけたところから採取します。それを丁寧に塗り固めたものは奥行きのある柔らかな艶をもちます。まるで傷口を守るかさぶたのようなこの素材は、ときに木の器の塗装として、ときに破損した陶磁器の接着剤として、ときに塑造の素材として用いられます。これほどまでに優しく、懐が深い素材を他に知りません。
その可能性を広げる手段として、3Dプリンターを選びました。細部から全体を造形し、データを変えれば一つずつ違う形を造形できる、ある種工芸的な機械です。
造形の根拠には、素材に命を感じるようなおおらかな宗教観があります。今この時代に、この場所で学んだこの私の感覚を反映するということを強く意識しました。
担当教員によるコメント
岡野は3次元で出力できるプリンターというデジタルな技術と自然の木から取られる漆という材に興味を持っていた。素材や表現に出会った時に既存の概念にとらわれずそれと向き合うことは意外と難しいものだが、彼女は独自の視点によって圧倒的なモノの存在感と質感を生みだした。無機質な積層式3Dプリンターによる造形の中に、自然の中の美を見出すことができる、そういう新しい美の概念を探究した秀作である。
教授・柴田 文江
- 作品名命を纏う形、或いは、命に形を与える。
- 作家名岡野 優子
- 素材・技法PLA樹脂、漆
- サイズH290×W80×D69mm/H290×W80×D69mm/H38×W272×D288mm/H45×W300×D282mm/H185×W280×D280mm/H33×W288×D286mm/H30×W205×D144mm/H15×W135×D145mm/H20×W98×D99mm/H20×W98×D99mm
- ジャンル立体
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員