対岸の机

西未 来乃

作品解説

デザインされたプロダクトも、大量生産の日用品も、暮らしを前にするとどれも等価に存在し、生活者によって新たな輪郭が作り出されていく。そうであるならば、暮らしとは生活者による生産的な行為なのかもしれない。等価となったモノたちは流動しながら一つの大きな存在へと一体化されていく。その様は、モノが暮らしの波に呑み込まれるようだ。

作者によるコメント

プロダクトデザインの学びを通して、一見素朴な生活が持つ大きな力に気づきました。キャスティングという手法を用いて実際に使われていたモノたちが使われている様子を型に取りました。

担当教員によるコメント

身の回りのモノたちの型を取り、透明な樹脂を流し込んで忠実に複製した立体物を作る。その後に表面を紙ヤスリで肌を曇らせ、モノたちの意味を見ながら配置することでこの作品は姿を現す。机、スツール、ワインボトル、コイン、鍵、コイン、皿、スプーン、読みかけの本、ペン、ノート、紙、時計、カメラ、電卓、ハンドクリーム。モノたちから色や素材を抜き取り、そこに残った柔らかくひかりを通すかたち達の集合の姿。そこに現れたひかりのかたちの実体は、時間の移ろいと共に限りなく姿を変える。生活の営みの中でモノ達は配置を変えかたちの集合の姿は移ろう。わたしたちが決して見たことがないけれども誰もが知っている世界の姿を西は記述している。

教授・深澤 直人、教授・長崎 綱雄