場所性を帯びた印刷物

齊藤 彩夏

作者によるコメント

この作品を通して、頭の中で思い浮かべていることを形にする難しさを知ることができました。
手を動かしながらひとつずつ知っていくことで、今見えているものをもっと繊細に受け取り、より美しく感じられるようになると信じて、つくり続けていたいです。
制作を支えてくれた多くの友人や後輩たちに心から感謝しています。ありがとうございました。

担当教員によるコメント

私たちが色や明るさ、面によって構成された奥行きを持った立体が「見えて」いるのは、光源から放たれた光の反射光が眼球の奥の網膜で電気信号に変換され、視神経を通じて脳の視覚野に送られた後に様々な処理が行われた結果である。「見る」という行為の中には、無数の複雑なプロセスが組み合わさっているわけだが、私たちは普段そんなことは微塵も意識していない。

齊藤の取り組みは、提示する情報自体を巧妙に操作することで、このような視覚情報処理プロセスの巧みさを実感させる試みでもある。翻って考えると、私たちデザイナーの仕事は形や色を操作し紙などの素材に定着させることで、意味を脳に送り込むための情報を設計することだと言える。そして、前述の通り私たちが反射光から世界を捉えている以上、制作物はそれ単独では存在することはできず、物体を見て受容する際の環境(空間の明るさなど)に大きく影響を受ける。齊藤はその作品の中で、光を操作するための環境と印刷物による立体を作り上げることによって、環境と物、そしてそれを捉える人の間でのインタラクションが統合された状態を提示している点に高い独自性がある。

この作品を作る中で経験した世界を構成する要素の繊細な操作を、社会の中で汎用的に実現するためにはどのような工夫が必要になるだろうか。展示というフォーマットを超えて、環境と物と人間のや作用をデザインできる新しいデザイナーを目指してもらいたい。

教授・菅 俊一

  • 作品名
    場所性を帯びた印刷物
  • 作家名
    齊藤 彩夏
  • 素材・技法
    インクジェットプリンタ用紙、Ardiuno、リレーモジュール、木材
  • サイズ
    2200×2730×3640mm 円柱 Φ66×100mm 四角錐72.5×72.5×102.2mm 立方体67.8×67.8×67.8mm
  • ジャンル
    立体
  • 学科・専攻・コース
  • 担当教員