仮想通貨ルンルン

野口 駆

作者によるコメント

現代社会では、身体の行動や状態が記録され、それらが価値として換算される仕組みが広がりつつある。しかし、そのプロセスはしばしば不透明であり、私たちはその背景に潜む矛盾や課題に気づきにくい状況にある。自作仮想通貨ルンルンは、スマートデバイスを用いて、作者の健康データをリアルタイムで記録し、通貨価値へと変換するシステムを持つ。このプロジェクトでは、デジタル経済時代における価値とは何か。また、それがどのように定義され、誰がその価値を決めていくのか問う。この問いを通じて、デジタル時代における新たな意思決定や現代の価値観について視点を広げる。

担当教員によるコメント

通貨の価値が特定の個人の生体データで管理されるようになったら、一体どうなってしまうのか?一見荒唐無稽でスペキュラティヴな仮定だが、スマートウォッチによって体温や心拍数といった究極的な個人情報がビッグテックに搾取される現代では、政治や経済の情報がSNSを介して人間の感情に左右されている現代では、リベラルだったはずのテック産業が独裁的な政治家に忠誠を誓う現代では、そしてあらゆる巨大プラットフォームがエンシット(メタクソ)化してしまった現代では、荒唐無稽どころかすでに起きてしまった現実とも言える。人間という生物のソマティックな状態が感情を生み、その感情が理性を制御している事実を、今改めて突きつける作品である。メディアが煽る健康ブームに注意せよ!

教授・久保田 晃弘

  • 作品名
    仮想通貨ルンルン
  • 作家名
    野口 駆
  • 素材・技法
    スマートデバイス、ディスプレイ、デスクトップPC、木製パネル、合板、アクリル板、モーター
  • サイズ
    サイズ可変(H3000×W4000×D4000mm)
  • ジャンル
    映像インタラクション
  • 学科・専攻・コース
  • 担当教員