Trace of Impermanence

SHU BROWN

作者によるコメント

タトゥー除去や脱毛に用いるインテンスパルスライト (IPL) で銀塩写真を変色させ、青いドローイングを写真上に構築した作品群。デリダの言葉を出発点に、描いた線を消す行為を繰り返しながら図像を再構築する行為を通じて、自己の心の機微や異質さ、変容に対峙する。その過程が他者の理解にどのように開かれるのかを探求する試み。

担当教員によるコメント

ここで使われているIPLという光技術は、脱毛やタトゥーの除去などに使われるものであるが、銀塩写真に採用することで、イメージにタトゥーを施してゆくという、逆転の発想がユニークな作品を生み出すことになった。増殖する独特な線は自己イメージに始まり、部屋や建物などに展開する。その様子は世界をタトゥー化してゆくかのようで、実にスリリングであるが、作者のコンセプトはIPLを単なるエフェクトとして扱うのではなく、一種の痕跡論としてイメージと言語の関係性へ思考を誘うところにある。精度の高いインスタレーションも含めて、今後の探究と作家としての活躍が楽しみである。

教授・港 千尋