夢想建築 -建築家のドローイングをインスピレーションとして-

水口 茉鈴

作者によるコメント

建築家は、現実のシビアな条件と制約の中で仕事をしなければからない。だからこそ、彼らのドローイングには、現実を超えた夢としての理想のかたちと創造の本質があるのではないだろうか。
私はそのドローイングに強く心惹かれ、私自身の夢想の建築をテキスタイルで表現することに挑戦した。建築物の陰影が生み出すかたちに着目したドローイングを元に、建築をコラージュするように構成し、立体的な建築物をテキスタイルへと展開する。

担当教員によるコメント

この作品のモチーフが何であるかが分からずとも、光と影の存在を感じるのではないでしょうか。水口さんは光と影の関係を操り美しい空間を生みだす建築に着目し、この作品のデザインを構想しました。つづれ織技法を用い表現しているのですが、この技法は直線を表すことが難しく、簡素化された要素で表現することは大きな挑戦でした。シンプルな形態で表しながらも色の濃淡を複雑に配置することで見る人を魅了します。平面作品でありながら、入り組んだ奥行きを感じることで見飽きることがありません。建築におけるテキスタイルの役目は光に質感を与えることだと思います。そのようなテキスタイルと建築の関係に着目するきっかけとなる新たな風景を感じます。

准教授・辛島 綾