丈夫な日常
渋谷 柚葉
作者によるコメント
私がほしいもの。
裂けない靴下、
割れないお皿、
病まない身体、
褪せない記憶、
果てない愛、
強くて確かな日常を願っている。
担当教員によるコメント
日常をつくる器を刺し子で表現した作品である。現代の印刷機械は、全紙を毎時間1万枚以上のペースで印刷できる。それにくらべると刺し子でイメージを描き出す作業はいかにも時間がかかる。実際、教室や廊下など、学校のあちこちで作品を縫う渋谷さんの姿を見かける日々がつづいた。聞いてみると登下校中にも作品を縫っているとのことだった。迫る締め切りを前にしても、渋谷さんは作品をちくちくと縫いつづけていた。大胆なアイデアをスピーディかつ大規模に伝えるコミュニケーションとは明らかに異質なものを彼女は目指していた。あえて時間のかかる方法を選び、大切に扱えばいつまでもこわれず、長もちする器をモチーフとして選んだことには、彼女なりの思いが込められている。その内実をつぶさに、渋谷さんその人と同じように感じることは他者である私たちにはできない。それでも、この作品を前にした時、伝わるものがある。素朴で温かい感情が、とりとめなく、ほのかに広がっていく気がする。なにげない日常の価値を渋谷さんは表現し、伝えていると思う。ビジュアルデザインは、そのような価値を伝える力があるのだと、芯のある心で伝えてくれているようにも感じられる。
准教授・佐賀 一郎
- 作品名丈夫な日常
- 作家名渋谷 柚葉
- 素材・技法糸、布
- サイズH340×W340mm(30点)
- ジャンルジェネラルグラフィック
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員