大衆酒場 髙柴屋

白土 優

作者によるコメント

僕は居酒屋が大好きだ。理由は祖母の家である。
最近僕は祖母の家を思い出す。祖母がおいしい料理を作ってくれたこと。酒の肴を好んで食べていた僕に「酒呑みになるね」と祖母が言っていたこと。心地よい居場所だったこと。
僕が通う店には祖母の家のような心地よさがあった。
もし祖母の家が居酒屋になったらそこは僕にとって至高の居酒屋だ。ここはそんな夢想の店。祖母の苗字が店名の暖簾や看板。壁に並ぶメニューは祖母の料理だ。毛糸には祖母のような優しさがあった。
いらっしゃいませ髙柴屋へ。どうぞごゆっくり。

担当教員によるコメント

居酒屋という場に自身の喜びを見いだした白土のピュアな発想は、新しいデザインの潮流よりも、よほど新鮮だ。居酒屋のひげ文字、そしてのれん、お品書き、ちょうちん、それらが紙や布ではなく、毛糸を布に手作業で打ち込むタフティングという手法でできている。そのことが当たり前の居酒屋を別視点で見ることを可能にしている。そのなんともシュールで、庶民的あたたかさを持った作品はデザインの文脈とは一線を画している。失われていく大切な日本文化を、もう一度追体験したくなるキッチュなジャパニーズポップアートである。

教授・大貫 卓也