排除ベンチで寝てやろう
定光 利季
作者によるコメント
東京にある公的ベンチのほとんどは、人が横になることができないようにあえて仕切りがつけられた排除ベンチと言われるものです。人に優しくない形をしたそれらを見る度に、私はなんかモヤ〜っとしていました。こんな意地悪なデザインでその場から横になりたい人が排除されたとしても、何の根本的な解決にならないし、むしろ利便性や安全性の問題が増しているのではないか、と。そこで意地悪なベンチに対抗し、アートで意地悪返しをし、排除ベンチをなくすプロジェクトを考案しました。もちろん節度を持った行動をしないとダメですけど、誰だって寝っ転がりたい時もあるし、排除ベンチはいらなくないですか?意地悪なものと社会で共存するのなんて嫌ですから。
担当教員によるコメント
厚生労働省によると、令和6年前半の東京都路上生活者数確認数はたったの624人であり、推定1400万以上の東京都の人口に比較すると、その数はとても少ない。それでも、彼らを公園や路上で休眠させないために、わざわざ税金を使って排除ベンチが作られ設置されている。作者はこれまでも、社会の中に散在する異物感を手繰り寄せ、日常的に黙認されている差別的行為や現象をインスタレーション作品としてきた。本作では実際に橋本、国分寺、新宿、渋谷、上野の5箇所の公園の排除ベンチを調査し、それぞれの形状に合った立体物を制作し組み合わせることから、排除の目的を無益化する作品とした。リサーチ内容と造形物を共に展示する試みも加わり、コンセプトが光る秀作となっている。
教授・笠原 恵実子
- 作品名排除ベンチで寝てやろう
- 作家名定光 利季
- 素材・技法木材、単管、簡易担架
- サイズ可変
- ジャンルミクストメディア、パフォーマンス
- 学科・専攻・コース
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- 担当教員