(タイトルなし)
伊東 理子
作者によるコメント
ささくれを捲ると、じわりとした痛みと小さな心地よさがある。
繰り返すうちに傷は深まり、隠れていたものが見えてくる。
透けて見えるのは悪意と、不安定な感覚。
めくるたびに残る痕跡は、自分を確かめるためのものかもしれない。
担当教員によるコメント
伊東の作品はトレーシングペーパーに「展開図らしきもの」や「プロジェクト構成図らしきもの」はたまた「社会への眼差しらしきもの」が描かれている。
絵画的な解決の痕跡から鑑みても、これらが単なる実現前のパース画や準備運動としてのドローイングではないことはあきらかだ。むしろここでのトレーシングペーパーは<彼女自身の/社会の>皮膜、さらにいえば、その皮膜に重ねた「皮膚に似せた高機能絆創膏」のようなものであり、彼女の思索と構造を同時に発話する立体的な見取り図そのものであると考えた方が自然だ。それを了承するとはじめて彼女のもつ日常への肯定の眼差しや、到達すべきユーモアとユートピア、さらには覆うべき傷さえもが、いかに現実の社会と相似形をとっているのかを透かし視ることが可能になる
准教授・雨宮 庸介
- 作品名(タイトルなし)
- 作家名伊東 理子
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー
- 担当教員