群像、霊峰

黒石 大史

作者によるコメント

この作品では、私がスケッチをするために実際に見た、体の大きな牛が何十頭も連なり、その間を重量感のある熱気が漂い、牛のフンのにおいや獣臭が牛舎中に充満している風景をそのまま作品にしようと思い、制作をしました。

担当教員によるコメント

 関心ごと、世界で起こっている出来事、歴史、事実、全てを透過して残る気配こそ、黒石さんの描きたいものなのだろうか。否応もなく善悪を超えて広がる世界観にみるものは圧倒される印象だ。大画面に塗布された温気を孕む芯の強さは、作家の君自身を飛び越えて私たちに何かを語ろうと動き始めている。裏付けされた一つ一つの積み重ねがモノを言う作品に化けた。卒業制作の全時間の中に黒石さんのアイデンティティーがあるのだろう。美しいとか、穏やかとか、優しいとか、そんな生半可な時間ではなく、カタチを得たいと試行錯誤した形跡が作品を守り、土台になっていることを今後も忘れないでほしい。

教授・千々岩 修