about

   「TAMA VIVANT Ⅱ」展は、多摩美術大学美術学部芸術学科海老塚耕一ゼミのカリキュラムの一環として、学生が中心となって企画・構成・運営する現代の美術・芸術のアニュアル展です。
 本展では、展覧会を通して現代の美術・芸術の在り方を積極的にお伝えするとともに、制度や偏見にとらわれない新鮮な眼差しで、日々の創作活動ならびに研究活動を刺激、活性化することに努めています。
 本展は、7名の作家による 40 数点の作品で構成されます。
 現代の発達した情報社会の中に置かれた私たちは、便利さと効率化を求めるあまり、本来物事を選択する自由を持っていること、そしてそこから得られる多様な体験があることを、忘れてしまっているように思えます。
 インターネットで検索をすれば、そこには商品や店舗の評価が表示され、過去の閲覧や購入の履歴に基づいて、利用者がほしいと考えられる情報が提供されます。その中で、私たちはものを直接見ることもせずに、情報に頼り、物事を判断してしまいがちです。この在り方は、現代の美術においても同様のことが言えるでしょう。なぜなら、私たちは美術作品であるという価値判断を、美術館や専門家に任せ、ただ受動的に価値のあるものとして一方的に受け取ってしまっているからです。「美術館にあるものが価値ある美術作品」だという暗黙の了解は、世間に広く浸透しています。
 このような受動的なものの見方に対して問題意識を持ち、その回答として私たちは「遍在」というキーワードを出品される作品から見出しました。
 本展覧会に集められた作品は互いに影響し合い、多種多様な美術の境界線を自由に行き来することが出来る可能性を、皆様に予感させることでしょう。これまでの受動的な美術の捉え方について考え直すことは「美術」と「鑑賞者」の関係を再構築する糸口になります。そして、美術作品の価値基準を自らに置くとき、鑑賞者は今までの一方的であった美術の受け手から、美術の参加者へと変わることが出来ると信じています。
 美術とは私たちの生活に根差したものでなくてはならないと考えています。美術へと至るチケットは既成観念の外側の至る所に、気づかれないままに落ちているのです。
 そこで私たちは、既存の枠組みを超えた、美術の広がりを示唆すると共に、身の回りに人知れず遍在している美術への「チケット」を見つける手がかりとなれば、との思いからこの展覧会を企画しました。<>be