Dear my room

LIM Hanbi

作者によるコメント

私の幼年時代を共にしてくれた愛着布団がある。椅子を積んで、布団を掛けてつくった生半可な空間。本、制作、私の一部だったすべてのもの。その小さな部屋が作ってくれた世の中で、私は何でも怖くなかった。そうして、今の私になった。捨てられたその布団を思い浮かべると、心が痛くしながらも、もう完璧に手放なしてやることもできそうな気もする。

担当教員によるコメント

「いまはこんなですけど、小さい頃は可愛かったんです」とハンビは言う。いやいや。彼女は韓国で小説を出版するほどの才女である。三年生まで木を彫っていた。ある種の暴力性を感じる人物像で、誰とも視線が合わないが、印象的な強い目を持つ彫像だった。小説が忙しいだろうに、と言うと「私には彫刻が必要なんです」と言い、次の作品では一心に布を縫い始めた。言葉が中心にあると思いきや、掘り起こしてきたものは触覚で、そこには彼女の原初体験ともいえる記憶が織り込まれている。「強い動機」による「柔らかい彫刻」。それは単に心地よい布団というだけではない。幼い頃に刻み込まれた「不条理への不安と怒り」を素材とし、軽やかにメディアを横断しながら作られた作品である。

教授・高嶺 格

  • 作品名
    Dear my room
  • 作家名
    LIM Hanbi
  • 作品情報
    技法・素材:布、ストッキング、椅子
    サイズ:H1000×W1500×D1000mm
  • 学科・専攻・コース