李氏朝鮮時代における日月五峯屏の研究―「境界」としての屏風と玉座―
堀田 結子
作者によるコメント
「日月五峯屏」は、500年もの間続いた李氏朝鮮時代において、代々の王の玉座に必ず備え付けられていた屏風である。本論ではこの日月五峯屏について、そこに描かれたものを図像として解釈するだけではなく、屏風の置かれた周囲の環境との有機的な繋がりのなかで位置づけ、そこに垣間見られる朝鮮絵画独特の構造について考察を試みていく。
担当教員によるコメント
大韓民國の1万ウォン札で世宗大王の背後に置かれている「日月五峯屏」とは日と月、五つの峯、山から流れ落ちる二つの滝、それらの前面の松を左右対称に表現した屏風を言う。玉座に付随するものとして朝鮮王朝、とりわけ李氏朝鮮の宮廷に必要不可欠のものであったが、その成立、意味内容については必ずしも定説があるわけではない。堀田さんは柳宗悦以来の「民画」的視点を維持しつつ、先行研究を渉猟し、中国にも日本にも類例のない、この無落款の特異な屏風を、あらゆる力の源である「天界」から流れ出す滝によって地上が洪水となり、新しい秩序が生まれるヴィジョンを描いたものであり(松は現世との境界標)、国王はこれを担う唯一の存在であると読み解いた。傾聴すべき論考である。
教授・本江 邦夫
- 作品名李氏朝鮮時代における日月五峯屏の研究―「境界」としての屏風と玉座―
- 作家名堀田 結子
- 学科・専攻・コース
- カテゴリー