企業の人事担当者・卒業生に聞く/メーカー

幅広い分野のデザインに携わることで成長し、それがやりがいにつながっている

京セラ株式会社

左から、卒業生の宮﨑萌さん、研究開発本部 統合デザインセンター責任者の北村和生さん

1959年創業の総合電子部品メーカー。ファインセラミック技術を基盤に、情報通信、自動車、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアなど幅広い領域において、素材から部品、デバイス、機器、サービスに至るまでの事業をグローバルに展開する。
https://www.kyocera.co.jp/

2025年10月更新


表現力、造形力に加え、コミュニケーション力の高さで
クオリティアップに貢献

北村和生さん
北村和生さん

京セラ株式会社

研究開発本部

統合デザインセンター責任者

電子部品メーカーとしてスタートした弊社は、技術力と多角化経営を強みに成長し、ファインセラミックスや半導体部品、通信機器、エネルギー、医療機器など、幅広い市場でグローバルに事業を展開しています。近年、消費行動の変化を指す「モノからコトへの転換」や、DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性や顧客満足度の向上とともにテーマになっているのが、個別のプロダクトラインを横断したソリューションの提供です。簡単にいえば、顧客のニーズに応じた製品やサービスづくりの体制を統合するということ。私たちの所属先の頭に「統合」とあるように、デザイナーがその役割を担い、デザインをハブとします。結果、デザイナーの仕事の範囲は広がり、かつ重要度も増しているのです。

現在、京セラには8名の多摩美OBが在籍し、活躍しています。主にプロダクトやUIのデザインを担当し、その中でも(株)NTTドコモ様向けのキッズケータイは2023年にグッドデザイン賞を受賞しました。多摩美の卒業生は造形力や表現力に優れていると思います。多摩美の自由な学びの環境が、豊かな感性を育むのではないでしょうか。ソリューションデザイン課の宮﨑さんも、その力がずば抜けています。卒業制作の作品を見てそう強く感じ、入社後もその仕事ぶりから採用は間違っていなかったと今から成長を楽しみにしています。コミュニケーション力が高いのも多摩美生の特徴です。メンバーと意志疎通を図り、信頼関係を構築できています。

デザイナーの役割は変化しています。当社でいえば、コンセプト力やビジネス視点などが求められるようになりました。そうした新しい流れをとらえつつも、ちゃんと表現して作れることを大事にしていきたいと考えているので、多摩美卒の皆さんにはさらなる活躍を期待したいと思います。

「デザインの領域が広がっていったときに力が生かせる」という先生の言葉が、自信につながった

宮﨑萌さん
宮﨑萌さん

2023年|プロダクトデザイン卒

京セラ株式式会社

研究開発本部

統合デザインセンター

ソリューションデザイン課

京セラに入社してデザインの業務の幅広さに驚きました。最初に担当したのは電動バイク専用のバッテリーステーションの外形デザイン。次に京セラが主催する「異種格闘技戦」という人気トークイベントの2025年度のメインビジュアルとなるバナーやSNS広告、フライヤーなどのデザインを担当。直近では京セラ「ファインキッチンシリーズ」のパッケージデザインのリニューアルを現在進行形で手がけています。シリーズの製品は多数あり、統一したデザインと個々のパッケージはロゴや配置など細部にもこだわり、ラフ案の提出から最終のデータ調整まで行うため、1年近いスパンになっています。幅広い分野のデザインに携わることでデザイナーとして成長し、それがやりがいにつながっていますね。

私は最初からデザイナー志望だったわけではありません。もともとは看護師を目指していたのですが、高校時代、私の描いた絵を見た教育実習生の方から美大に行くことを提案されたのが最初の目覚めで、その後に通った美術予備校でも美大進学を薦められて方向転換を決意し、無事現役合格しました。多摩美のプロダクトデザインを専攻したのは、大学案内を見たときに三次元の立体をデザインするというのが一番カッコ良く思えたからです。3Dプリンターなど最新の機材がたくさん揃っているのも魅力でした。学生時代は課題に追われる毎日。大学に残って遅くまで制作に励むことも少なくなく、自宅より多摩美で過ごす時間のほうが圧倒的に長かったです。おかげで充実した学生生活を過ごせました。

多摩美で学び、卒業できたことは、デザイナーとして仕事に向き合う日々の自信になっています。中でも厳しく指導していただいた中田希佳先生の存在は大きいです。深く心に刻まれた中田先生の言葉があります。プロダクトデザインとは製品の外観や機能、使いやすさなどを考慮するものですが、既存のアプローチは私には不向きとしたうえで、「これからのプロダクトデザインは製品やサービスの背景にあるストーリーや体験といった部分まで想定することが大事になってくる。デザインの領域が広がっていったときに、宮﨑の持つ力は生きてくる」と。あと、多摩美で各種デザイン機材に慣れていたため、当デザインセンターの3Dプリンターなどの機材をすぐに使いこなせたのもアドバンテージになりました。専用のソフトウエアも同様です。

プロダクトデザイナーを目指す人は、学生のうちに、基本的なデザインに関する知識とかをしっかりと勉強しておいた方がいいと思います。プロダクトデザインの歴史や代表的なデザイナーについてなどの知識をたくさん勉強しておくことをお勧めします。社会人になってから必要になり、私も勉強しているところです。また、いろんな人と接して相手の気持ちを感じたり、いろんな場所に行って環境を実感したりする経験は、様々な人たちに向けたデザインをするデザイナーにとって一番大切なのではないかと考えています。