「今、糸井さんに聞いておきたいこと」⑭
教養総合講座B「デザインを話そう。」 第2部
登壇者:糸井重里 / 上田壮一 / 宮崎光弘(担当:木下京子教授)
⓮「自由と意力」と「夢に手足を」
宮崎:実は30分で終わりなんです。が、ちょっとだけ5分ぐらい伸ばしてですね、最後に糸井さんに見ていただきたい映像があって。もういきなり見てもらおう。多摩美のコンセプトムービーなんですけれども。
宮崎:この映像は情報デザインコースの宮崎ゼミの卒業生の林響太朗さんという人が、「自由と意力」っていうコンセプトムービーとして作ったんですけど。コロナ禍でみんなが結構縮こまっている時に、「どうやって始めるか」っていうような思いを表現したものなんです。で、この映像を見た時に僕はこのコピーを思い出したんです。

宮崎:「夢に手足を」。まさにこの「夢に手足を」は、今皆さん黙読してもらうといいかもしれないんですけども。糸井さんが2016年に『ほぼ日』のコンセプト(理念)として書かれて。先ほどの谷山さんは、「2016年のTCCに出せば絶対大賞だった」っておっしゃっていましたけれども。なんか本当に近いものがあるなと思って。で、糸井さんはどう思われるんだろう?と最後にお聞きしたかったので、映像を見ていただきました。
糸井:うーん。そうですね。手足がつけられない状態もありだなって今日思いました。「そういう場があって良かったですね」っていう言い方でしょうか。つまり具体化しろとかっていうのも、さっきの利益上げろっていうのと同じように、慌てることはない。だから「夢に手足を。」って思っているのはいいんだけど、「まだ手足ついてないんだよ」っていうのも話し合えるじゃないですか。ホラも吹けるし。そういう学校っていう場があることが、なんか僕は、今までは「学生の言うことだろう」みたいな気持ちがなくはなかったわけだけど。そういうのが心に温かいものとしてあるんだったら、手足焦んなくていいんじゃない。つまりオタマジャクシに手足は生えるけど、まだ生えていないオタマジャクシもいるじゃないですか。やがて生えるにしてもね。だから生える前のやつも肯定されていいんじゃないかなって思った上で、「夢に手足を。」ってことを今日、なんかもっともっと大きく捉えた方がいいなっていう風に思いました。大人にはホラばっかり吹いているやつに対して批評的に「手足を」って言いたくなるんだけど。若い時にはなくても、いつかつくよっていう。そういう環境があるってことがとても大事だと思った。だから先生方の今日の記念の日なんで、特に思ったのかもしれないですけど。こういう場があったってことは、学生さんたちにとってもだけど、先生にとっても素晴らしい場だったんだと思ったんですよ。今の映像も「このインフラ作るの大変だぞ」。システムから先生の手配から建物から土地からその掃除から水道の蛇口から。これお前やってみろって言ったら絶対できないぞっていうようなすごいインフラに支えられてみんなが伸び伸びと「夢に手足を」とか言っていられるわけで。それはね両方あるんだよっていう。僕にはこの学校は作れないわけで、いいなあと思っていますよ。
宮崎:たしかに。
糸井:いやインフラはいいね。震災の後の自衛隊の活躍を見る時と同じですね。
宮崎:ああ、なるほど。
糸井:俺にはできないっていうね。すごく羨ましいですね。
宮崎:ありがとうございます。じゃあこれで終わりにしたいと思うんですけど。せっかくだから最後の最後にこの「夢に手足を」を朗読して終わりたいと思っているんです。僕が朗読するより、さっきのブックフェスに行ってきた沼部さんいいですか。いきなり振ってますけど。
糸井:声で聞くの僕これ生まれて初めてかもしれない。
宮崎:ぜひ。じゃあ、それを聞いて終わりにしたいと思います。
永井:ありがとうございます。
沼部:じゃあ、失礼します。
糸井:ありがとう。

沼部:「夢に手足を。
夢には翼しかついていない。
足をつけて、
歩き出させよう。
手をつけて、
なにかをこしらえたり、
つなぎあったりさせよう。
やがて、目が見開き、
耳が音を聞きはじめ、
口は話したり歌ったりしはじめる。
夢においしいものを食べさせよう。
いろんなものを見せたり、
たくさんのことばや歌を聞かせよう。
そして、森を駆けたり、
海を泳いだりもさせてやろう。
夢は、ぼくたちの姿に似てくるだろう。
そして、ぼくらは、夢に似ていく。
夢に手足を。
そして、手足に夢を。
2016年1月 糸井重里
ありがとうございました。
宮崎:沼部さん、ありがとうございました。
糸井さん、永井さん、上田さん、本当にありがとうございました。 これでこの講義を終わります。
会場のみなさんも本当にありがとうございました。

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