J・M・オルブリヒのキャンディレブラム(枝付燭台)
Josef Maria Olbrich
0421880頃、建築・デザイン学校の生徒達はは、当時一般的であった美術様式に反発を強めていた。中でも若い建築家やデザイナーたちは、歴史的様式を重んずる新古典主事的解釈に反対し、新しい表現様式を発展させようと、スコットランドやオーストリアに由来する装飾的な曲線や直線フランスやベルギーに由来する花の装飾模様にデザインの原点を求めた。その上で、それらを新古典主義と合体させたのである。この新様式はフランスではアール・ヌーボー、ドイツでユーゲントシュティール(青春様式)、ベルギーではスティル・モデルヌ(現代様式)、イタリアではスティーレ・リバティ(リバティ商会様式)、スペインではモデルニスモ、その他の国でスタイル2000などと呼ばれた。アール・ヌーボーはパリの美術商S・ビングの店の名前アール・ヌーボー・ビングにちなんでつけられたものである。  ヨゼフ・マリア・オルブリヒ(1867-1908)は、オーストリアを代表する優れたアール・ヌーボー作家である。彼は建築、金属工芸を含む装飾芸術の両分野で活躍した。その作品は、当時流行の華美で曲線の波打った造形表現に比べて、機能的ですっきりした造形が特徴である。高価な銀製の作品も残しているが、最も有名な作品は、デュッセルドルフの鍛冶屋向けに製作された白目製のキャンディレブラムのような、安価な金属製品であった。しかし、こうしたオルブリヒ作品は現在ほとんど残っていない。彼は、代表作のウィーン分離派展示館の設計を手がけた10年後、1908年に白血病で他界した。


【素材】磨きをかけた白目


100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス